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日本初、三ツ星中国料理『茶禅華』シェフ

プロフィール
中国料理 茶禅華シェフ
川田 智也さん
中国料理「麻布長江」で10年間、日本料理「龍吟」にて5年間修行を重ね、2017年2月に中国料理「茶禅華」をオープン。

-仕事を通して実現したいことを教えてください。

世の中の物事は全て、太陽と月、男と女、炎と水というように、対局する陰と陽があります。中国料理の対局にあるのが日本料理。陰陽太極図のように、中国料理の大胆な旨さと日本料理の繊細さ。二つを上手く調和させることで、日本における中国料理を極めたいと思っています。



―ビジョンを実現する上で難しかったことを教えてください。

中国料理を学んだ後、日本の食材を活かす料理として日本料理を学びましたが、そこで中国料理と日本料理の親和性を教わり驚きの連続でした。自分の国の料理、自分の国の言葉なのに、まるで外国語のよう。それだけ日本の事を知らなかったんですね。例えば日本のお茶は日本で自然に起こり現れたものだと思っていたら、実は中国から伝わってきたものでした。抹茶も中国から。ですが中国で抹茶の文化は衰退し、一方、日本に伝わってきた美しい茶文化は茶道に磨き上げられました。日本語もそうですよね。漢文から音訓が出て、ひらがな、カタカナが生まれ、漢字で力強さをひらがなで柔らかさを表現しました。中国の文化を吸収しながら、迎合したり融合するのではなく、日本人の精神で昇華洗練そして調和させてきたのが先人の方々です。

料理においても、中国から伝来した食文化を日本の食文化という独自のものにしていった経緯があり、時を経て今、皿の上に乗っている。日本人の精神性や歴史、文化を凄く考えましたね。



―本物で有り続ける為に大切にしている事を教えてください。

食材の声を素直に聴くことを大切にしています。料理で一番大切なのは、料理人個人を表現することではなく、食材を引き立たせることです。私が日本で中国料理を提供するのに日本産の食材にこだわるのは、鮮度が良いものが揃うから。ですが、秋、冬の時期は、蟹は上海蟹を使います。日本にもし上海蟹を超えるものがあれば迷わずそちらを使いますが、色々探しても上海蟹を上回るものは見つかっていません。それも食材に、美味しさに、心に素直であることだと思っています。



―同じく本物を追求する美巣についてどう思いますか?

ツバメの巣は中国料理の世界では味も香りも無いと言われていて、食感は寒天の様で、偽物が多く、以前は使用することを躊躇していました。美巣のツバメの巣に出会って、味、香り、食感が完璧に整っているツバメの巣に初めて出会えたと思いましたね。味、香りといっても、直接的な塩み、甘みなどの分かりやすいものではありません。味には2種類あって、舌の前面で感じる味と、横に広がり奥に余韻が伸びる味。美巣のツバメの巣はお茶の世界に似ていると思います。最高峰のお茶をいただくようなイメージで、塩み、甘みはないのに、鉄分やカルシウムといったミネラルによってふくよかな味を感じるのです。香りは森林浴や日光浴で感じるような、鼻に抜けるのではなく胃にグッと入ってくる香り。

中国には医食同源という言葉があります。例えば秋で乾燥している、肺が乾いているなという時に、瑞々しい梨を食べると、足りないものが補われている感覚、整う感覚を感じることがありませんか?梨には喉や肺を潤す効能がありますが、それを知らなくても感じる、食べたものが体に染みわたっていく感覚。それが体や心にとって美味しいということです。ツバメの巣の効能を知らなくても、美味しいと感じていただけると思います。



―最後に、ツバメの巣の美味しい食べ方を教えてください。

すごく天然なものだから、合わせるものも天然じゃないと成立しません。ツバメの巣が一番背中を押されるような調理は何だろうと常に考えています。私のお店では天然の杏仁を絞り出して温かい状態でお出ししたり、デザートにしたりしています。高価な食材なので、6万円のコースでしかお出ししませんが、他のコースでもご希望いただければ変更してお出ししています。他にも衣笠茸にツバメの巣を詰めてスープをかけたり、鶏の手羽先に詰めて揚げたり、卵白と一緒に炒めたり。てんさい糖に漬け込んだ『美巣16』のように、それだけをデザートのように食べるのも良いですね。繊細で軽やかな調理が合うと思います。